あなたが見てるから。

お出掛け前の女性の身支度って、

長くないですか?

俺の妻も例にもれず長いのです。
着替えして、化粧して、ヘアスタイル決めて。

どうしてあんなに時間がかかるんでしょうか。

俺は待たされることをそれほど苦には思わないから、いくらでも待つのは構わないけれど、
それにしても長すぎるんじゃね?

 

この前の休みの日。
久しぶりに二人で出掛けることになった。

「ちょっと待って」

急に外出することになった妻は、いつものように身支度を整える。

いつもなら何も言わずに待っている俺だったが、
その日に限って何だか我慢できず、

「早くしろよ」
「そんなオメカシしても誰も見てねーよ」

鏡に向かう妻にそんな嫌味な言葉を投げ掛けてしまった。

すると妻は、

「あなたが見ているからね」

鏡に向かったまま髪を巻きながら、

「わたしがおめかしするのはね」
「あなたがわたしを見てくれるからよ」

「誰のためでもないあなたのためだから」
「黙って待ってなさい!」

そう言って笑った。

 

妻曰く、

俺が他の女性に目移りしないように、
外出の時はとびっきりの「美人」で隣りに寄り添うことにしているという。

そして、

「美人な奥さんを連れているとあなたも鼻が高いでしょ」
「他の方があなたを羨ましがるようにね」

自信満々でそう話す妻。

「お前のその自信はどこからくるんだよ」

そう尋ねる俺に、

「あなたがわたしを好きでいてくれるから」
「わたしは絶世の美女でいられるの」

腕を掴んで俺の顔を覗き込みながら妻は自信たっぷりに笑った。

そうだな、
鏡に向かって俺のためにキレイになっていく妻を眺めているのも悪くはない。

長く待った甲斐もあって、
俺の隣りには絶世の美女が並んで歩いていた。

 

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